思いは記念日にのせて
 
 郵便受けを確認すると、貴文さんと西園寺さんの結婚式の招待状が届いていた。
 挙式の日取りも決まったんだ……よかった。
 エレベーターに乗って封を開くと、八月三十日と書かれている。うわ、結婚式ラッシュってこういうことなんだろうな。でもおめでたいことだから出席するけどね。
 チーンと音を立ててエレベーターが五階に着いたことをお知らせしてくれた。
 キャリーケースをがらがら引っ張って降りると足がむくんでいるのかとっても重だるい。早くベッドの上で足を思い切り伸ばしたい。その前にお風呂にゆっくり浸かって足をマッサージするのもありかも。
 肩もコキコキ鳴るし、明日はマッサージにでも行きたい……伸びをしながら首を左右に振ったりぐるぐる回してみる。

「あー足がパンパンだよぅ」
「おかえり」
「っ、悠真!」

 むくれた表情の悠真がうちの前に立っていた。
 しかもあの時と同じTシャツにジーンズ姿、そして履き慣れた雪駄で。
 だけどあの時と違うのは、わたしの気持ち。
 なんで前もってなにも言わずに帰ってきたのとか、入れ違いになったことの憤りなんて吹っ飛んでしまっていた。

 ひさしぶりに見れた悠真の姿にわたしの胸は歓喜に打ち震えていたんだ。
  
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