強引上司の恋の手ほどき
「いいえ」

「そうだよな? だったらまだ目標達成してないだろ? 乗りかかった船だ。お前がまともな恋愛できるまで、俺がみっちりしごいてやる」

驚いて口をぽかんと開けている私を見て、課長がケラケラ笑う。

「こうなったらお前が“ほんとうの”初恋ができるまで、可能な限り見届けてやるからな」

髪をグチャグチャとかき混ぜられた。

じゃあ、私が誰かと付き合うようになるまでは側にいてくれるってこと。

でも……私が好きなのは、課長なのに。

私が『好き』って言ったらどう思うんだろう。気まずくなって絶対に今みたいな時間は過ごせなくなる。

課長への“好き”っていう気持ちに向き合いたくて、中村くんと別れたのに課長と一緒にいるためには、それに気づかれてはいけないなんて本末転倒だ。

でも……それでも私は、少しでも課長の側にいたいと思った。それがたとえ、どんな形でも。
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