強引上司の恋の手ほどき
「いや、私だってわかってるんです。初心者の私がいきなりゲームでいうところのラスボスみたいな中村くんと、付き合うなんて難しいって……」

「いや、そんなことねーよ。敵はでかいほど燃えるもんだ。ほら、グラス持て」

言われるがままに、目の前にあったグラスを持つ。

「その、ラスボス討伐、俺も協力してやるよ。大事な部下の頼みだからな」

そう言うと、グラスをコツンとぶつけてきた。

「お前の悩み、俺が全部解決してやるよ」

ニヤッと笑ったその顔が頼もしいはずなのに、何故か不安を感じたのはどうしてだろうか?


「あの、私はただ相談にのってもらいたかっただけなんですけど」

「そんな生ぬるいやりかたで、上手くいくと思うのか? 俺が“手ほどき”してやる。手とり足とりな?」

手ほどき? 手とり、足とり?

疑問しか浮べていない私の顔をみていたはずなのに、課長は強引に話を進める。

「お前は、だまって俺の手を取ればいいんだ!」

「わ、わかりました。よろしくお願いします」

これで中村くんとのお付き合いは、優秀な参謀を得て順調に進むのだと……この時の私は思っていた。
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