動き出した、君の夏
右手で左手首を握って、夕の背中が震えていた

その背中に、散々躊躇(ためら)って声をかけた





『………ゆ…夕…』

夕の背中が、ビクッと強張った
そして、ゆっくりと体をひねってこっちを向いた



「……千夏…?」

あたしの名前を呟いた顔は
茶色い土が鼻に付いていて
右目からはオレンジの涙が一筋流れていた




『……あの…』




下を向いて、黙り込んだ
オレンジ色に染まったマウンドの土を数十秒見つめて、顔を上げた




『ごめん』
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