おでこにキス。
「すみません。じゃあ明日から有給使わせていただきます。」


「あーはいはい。日野さん。明日からお休みだったね。ゆっくりしてきてね。どっか旅行でも行くの?」


メガネで、小太り、少し薄くなった頭。


典型的な中年上司がニッコリ笑って聞いてくる。


「あ…いえ。旅行ではなくて、久しぶりに実家に帰ろうかと思いまして。」


「あーそっかそっかぁ。いいことだね。楽しんでおいで。」


そう言って上司は、快く送り出してくれた。


会社のビルを出ると同時に汗ばむ。


「あっつ。」


夜なのにまだ暑いなぁ。


まっ8月だもんなー。そりゃそうか。


そんな事を考えながら、さっきの上司の言葉を思い出す。


『楽しんでおいで。』


「……楽しめるのかなぁ。」


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