琥珀色の王太子様に愛されすぎて困ってます!

瞳から涙が溢れ、それを止める事も出来ずに、ただ俯いて泣いてしまいました。

その姿を見たサイラス様は、胸元のポケットからハンカチを取り出すと、無言で差し出してくれました。


サイラス様の香水の香りがするハンカチ。
まるで、サイラス様に抱かれているようで。


叶わないと言われて、忘れなさいと言われて。
でも、諦めなければならない人は、優しくて。


その優しさが今の自分にはとても残酷なものなのだけれど。



「・・・サイラス様、お願いが一つあります」

「どうしました?」

「このハンカチを頂けませんか?」

「それを、ですか?・・・構いませんが、どうして?」


「お守りに、したいんです。これがあれば何となく頑張れるような気がして」

「・・・そうですか」


きっとこのハンカチを傍に眠れば、サイラス様の夢が見られるはず。
現実で一緒になる事が叶わないのなら、せめて夢の中だけは一緒にいさせて。


神様、そのぐらいはお許し下さい。
この想いは直ぐには忘れられそうにないから・・・。

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