死にたがりヒーロー


だから、こんなときにまで心配をかけたくなかった。


甘えてばっかりじゃだめだって、こんなときくらいしっかりしなきゃって。

そう、思ったんだ。


「はあ……。 ほんと古都は、あほだなあ」

「なっ……」


私はものすごくまじめに言ってるのに、あほって!

心底呆れたように言う伊都に、今日ばかりは少し腹が立つ。


「古都」

「……なに」

「古都はいつも通り、俺に甘えてたらいいんだよ。 俺の体調が悪くたって、そんなのどうってことない」

「あるよ! だって、そんなことして……」

「俺はいなくなったりしない」

「……っ」


私を遮ったその言葉に、息を呑んだ。


思わず見上げると、伊都は見えない涙を流して微笑んでいて。

触れたら、壊れてしまうんじゃないか、とさえ思うような儚い表情だった。


「古都が俺を頼ってくれないのは、俺を余計に苦しめるだけだって……そんなの古都がいちばん、よく知ってるはずじゃなかったの?」


なぜだか私には、それが、とても綺麗に見えて。 愛しく思えて。

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