死にたがりヒーロー


『嫌いだよあんな人……! どうしてお母さんが、泣かなくちゃいけないのっ!』

『古都ちゃん……』


母が、父と別れて、苦しみから解放されることはなかった。

私の前では気丈に振る舞い、なんでもないかのように接してくれていても、夜な夜な父の名を呼び、酒に溺れ、泣いていること。 私は、知っていたのだ。


日に日に母がやつれていくのを、私は肌で感じていた。

どうして母が、あの人を思って毎晩涙を流さなければならないのか。苦しまなければならないのか。


私にはまったく理解できなかった。

それでも、ただひとつだけわかること。


それは、あの人がすべてを狂わせたのだということだった。


『どうしよう、あの人のせいでお母さんが笑ってくれなくなっちゃったら。 いやだ、いやだよ……‼』

『古都ちゃん、おちついてっ!』

『……っ』

『大丈夫だよ、きっと。またすぐに今までみたいに笑ってくれるよ! ねっ?』

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