目には目を、歯には歯を
続行
二人目の行方不明者が出た後、ジャックが職場のガソリンスタンドで、預かりの車を洗車していた時に、アルファが話しかけてきた。

「なぁ、お前って、ここに来る前はどこの国にいたんだ?」

半年近く一緒に働いていたが、アルファにそう訊かれたのは初めてだった。

「俺か? イギリスだ。イギリスの、ロンドンってところ」

「イギリスかぁ。…なぁ、そういう国だと、犯罪が日常茶飯事って話、本当なのか?」

例の行方不明事件が、アルファも気になりだしたようだった。

「本当だ。まぁ、大きな事件は毎日起こるワケじゃないけどな」

「…やっぱり、殺人事件とかも起こったりするわけか…?」

心底嫌そうな顔をして、アルファがなおも尋ねる。

「…あぁ、そりゃあ、まぁ…」

当然だろう、と言いたいのを、ジャックはぐっと飲み込んだ。
この国では、殺人事件は起こらないらしいからだ。

「そっかぁ……」

何か言いたそうなアルファに、今度はジャックは何も促さなかった。

そのままアルファは口をつぐみ、その日の会話はそれで終わりになってしまった。


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