妖の王子さま
「きゃああ!!高いっ、落ち、おち・・・っ」
「うるせぇな、女。黙ってろ」
浚われた蒼子は、力強い腕に抱かれ空を飛んでいた。
初めての経験に、恐怖を感じ落とされないように必死にしがみつく。
「あ、あなた・・・っ」
「口の減らねぇ女だな」
怪訝そうな視線を向け、腕の中の蒼子を見下ろすのは、いずなだ。
大将自ら、蒼子をさらいにやってきたのだ。
「お前、人間だろう?」
「え―――――っ」
「狐は人を化かすのがうまいからな。あの狐の大将が女なんか連れてるから気になって調べさせたら、人間だっていうじゃねぇか」
おかしそうにケラケラと笑いながら唇の端を釣り上げた。
「わ、私をどうするつもりですか?」
「お前に、興味がある」
いずなはそういうと飛ぶ速度を速めた。
蒼子はしがみ付く手を強め、落ちないように必死だった。