妖の王子さま



「蒼子さま、決して無理はなされないようお願いします。母上様は気性の激しいお方です。ましてや人間の蒼子さまに、なにをするか・・・」

「ありがとう多々良。大丈夫。私、頑張ってくるね」




蒼子も内心はとても恐ろしかった。
だが、ここまでして突き通してしまった以上それを表に出すことはできなかった。

震えそうになる身体を必死に抑え込み母がいる部屋の襖の前までやってきた。
この向こうにいると思うと、否応なしに胸が騒ぎだす。



ただならぬ空気を感じた。
部屋の中から、重苦しい震えあがりそうになるオーラが。




「母上様、蒼子さまをお連れしました」




多々良がそう告げ襖を開く。
蒼子が中に足を進める。


部屋の中は薄暗く、異様な雰囲気に包まれていた。




多々良も蒼子と共に中に入り、襖のすぐ前に座る。
蒼子は部屋の中心部に正座をして座った。




その正面、簾が垂れ下がっているその向こうに、座っているシルエットが見える。
ゴクリ、とつばを飲み込み蒼子が頭を下げた。





「蒼子です。お会いできて光栄です」




震える声で、そう言った。




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