妖の王子さま
「このまま帰るの?」
「ん?ああ、ううん。蒼子は一度自分の家に帰ってるといいよ」
「え?」
「おれたち少し用があるから」
蒼子はそう言われて首をかしげた。
そう言えば、明日にはって言われたのだ。
今日帰るわけではないのか・・・。
用とはなんだろう、蒼子はそれ以上は何も聞けず頷くしかなかった。
「蒼子、明日迎えに来るからね」
「蒼子さま、また明日!」
元気よく牛鬼は手を振って去っていく。
その後ろ姿を見送って、蒼子は自分の家に帰った。
妖の仕事というのは、長くいてもよくわからないものだ。
蒼子は首をかしげながらも考えても仕方ないと割り切り家をあけるため身の回りの整理を始めた。
次、いつ帰って来れるかもわからないのだ。
もしかしたら帰ってこれないこともあるかもしれない。
そう思うと、少し感慨深くもあった。