妖の王子さま



それほどまでに、白玖は強い意志を持つようになっていたのか。
従順であった白玖は、もうどこにもいないのだ。



「わらわの白玖が・・・。わらわの・・・」

「この世はいずなが纏めます。ですが、虐げることはしないでしょう。母上の生活は、保障されるはず。もう、おれは必要ありません」




白玖はそうはっきりと告げると立ち上がり背を向けた。
もう、鎖を断ち切って。
振り向きはしない。

負けはしない。


もう。



生きたい場所が見つかった。
知らなかった感情を知った。
それを、失いたくはない。




楽しいも。
悲しいも。
苦しいも。
嬉しいも。



感じたい場所は、ここではない。






蒼子の、側なのだから――――――。






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