Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~

04 お話合いはカップルシートで

 早めに仕事を切り上げて、待ち合わせの場所で永瀬を待つ。
 障害の多い自宅での会話は危険であると判断した私は、話し合いの場所を外に設けることを提案した。場所は自宅近くに最近オープンした若者向けのオシャレな居酒屋。

「なぁ。密着したいんだったら家でよかったんじゃねぇの?」
「ち……違う……!」

 オープンして間もない店は月曜日といえど多くの人で賑わっていた。
 混みあう店内で席の指定ができるわけもなく、私たちが通された席は、隣同士並んで密着するカップルシートだった……!

「近づかないで! もっとあっちいってよ!」
「これ以上無理だよ!」

 騒がしい私たちの声も、混みあう店内の中では雑音の一つ。
 永瀬は店員を見つけるとすぐに声をかけつかまえる。

「酒飲む?」
「いい」
「じゃあウーロン茶一つと……」

 一緒に外でご飯を食べたことは何度もある。永瀬との外食は楽だ。特にお酒の席では、食べたいものがある時は言うけど言わなければ適当に注文をしてくれる。私は基本出されたものは何でもおいしくいただくタイプだから多くあるメニューを見て悩む時間をカットできるのはありがたい。
 店員さんに気軽にオススメを聞いたり楽しそうに会話をする永瀬を見ていると、店員を呼ぶと言う行動にすら苦手意識のある人見知りの私は時々羨ましいと思うことも。
 注文を済ませ店員が去ったことを確認すると私は早速本題に入った。

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