Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
 翌日、眠気と疲れの溜まった身体を押して出社すると上司から今日一日のスケジュールが細かいところだと分刻みでびっしりと書かれたメモを受け取る。今日は一日内勤。デスクワークは苦手だけど、昨日の激務を思えばマシだと思える。

「それがこれからの川島さんのだいたいの業務内容だから。毎日の一日の流れはそんな感じで」
「あ、でも……昨日は……」
「いやぁ、昨日はごめんねー。業務初日だから気分転換になると思って現場に同行してもらったけどかえって辛かったよね」
「いえ……」
「ま、うちの部署は内勤の方がキツイんだけどねー。はははっ!」
「……ははっ」

 愛想笑いも顔がひきつる。疲れている時に朝からこの上司のハイテンションはちょっとキツイ。

「今日一日がんばれば夏休みなんだから、頑張ろうね!」
「……え?」

 去りゆく上司の背中を見つめながら固まる。
 夏休み……?
 机の上に置かれた卓上カレンダーを手に取った。今日って何日だっけ? というか何曜日?
 キョロキョロと事務所内を見渡すと壁にかけられた日めくりカレンダーが目に入った。
 明日からお盆休みだった。うまい具合に土日も重なって5連休だ。ここ最近バタバタしていて気付かなかった。
 目の前がぱあっと明るくなった気分。
 始業時間まであと数分ある。私は会社一階にコンビニに行き栄養ドリンクを買って一気に飲み干し気合を入れた。

 今日も残業だったけど、なんとか午前様は回避して会社を飛び出した私はその足でホテルには帰らずに駅へ向かった。
 どんな顔をして会ったらいいのか分からない。一番に口に出したい言葉も見つからない。ただただ永瀬に会いたいよ。その思いひとつで私は昼にネット予約した夜行バス最終便に飛び乗った。

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