Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~

14 何か、忘れているような気が……

 エアコンの効いた部屋で冷たい飲み物を飲みながらコンビニで買ってきたアイスを食べる。なんて幸せな時間なのだろう。
 永瀬の部屋にやってきた私たちはまったりとした快適な時間を過ごしていた。

「せっかくの夏休みだし、どこか行きたいなー」

 何気なく出た言葉だったけど具体的に行きたい場所があるわけでもなく、どうしてもどこかに出かけたいわけではなかった。ただ、なんとなく。

「どこかって、どこ?」
「うーん。近場のテーマパークとか」
「すっげぇ混んでると思うけど」
「そうだよねぇ、家族連れですごい人だよねぇ」
「夏といったら……あ! 夏祭りとか」
「いいね、お祭り! 花火大会!」
「行くか。でもどこでやってんの? いつやんの? 今日やってんの?」
「……さぁ?」

 普段からあまりイベントごとに興味がないせいか情報には疎かった。……お互いに。
 私たちは思いを伝えあい恋人同士となったわけだけど、恋人らしくデートが出来るような関係には程遠いようだ。さらに晴れて恋人同士になって、しばらくぎくしゃくしていた私たちの関係が友達だった頃のような自然な雰囲気に戻ったように思う。だから実は恋人同士と言うのもいまいちしっくりこない。

「じゃあ、海とか。プールとか」
「え……水着着る勇気ないんだけど……」
「……」
「無理。あと5年若かったら」
「……あっそ。ま、どこに行っても暑いし人多いし、涼しいとこでのんびりするのが一番だよ」
「確かに」

 結局外には出ないという結論に至る。
 こんな意味のない会話を交わしながらも、過ごす時間はとても気楽で居心地がよくて、足を真っ直ぐに延ばして座りリラックスムード。途切れる会話も気にならない。念願のチョコ味のアイスをスプーンですくって口に運ぶ。

「おいしい!」
「美味い?」
「一口あげよっか」

 でも、友達だった頃とは徹底的に違う部分が一つだけ。

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