Verbal Promise（口約束）～プロポーズは突然に～

21 ダメ押し

　心地のいい疲労感がまどろみの中へと誘う。このまま眠りにつけたら最高なのに。

「……もう、無理。できない……」

　あれから二度抱き合って、ぐったりと横たわる私の身体にまとわりつくようにして永瀬が腕をからめてくる。

「へばんなよ。まだ夜は長いぜ？」
「意味わかんないし……夜明けまでヤルカップルなんて元お隣さんのバカップルだけで十分……」
「朝までか……それはさすがに。頑張ってみる？」
「バカなこと言わないでよ！　もう寝かせて～」
「目が冴えてんだよ。付き合えよ」
「なっ、やんっ……あっ……」

　耳の裏に舌を這わされて首筋をかじられる。声を上げる気力もないはずのに、反応をしてしまう自分の身体が今は憎い。

「なんだ、元気じゃん」
「もぉ……っ！　眠れないなら一人で起きててよぉ～っ」
「無理だよ。こんなエロい身体が間近にあるのに」
「や、あ……ッ」

　私の身体に圧しかかってくると両手が胸に触れた。ふにふにと掌や指が動くたびに感じてしまう。まろどみの中からは完全に連れ戻されてしまったけど、まだ抗議をする理性は十分に残っていた。

「ん……触り方がやらしいよ……や、やめっ……」
「やらしいことしてんだろ？」
「んっ……！」

　唇を奪われると、甘くゆっくり緩やかだけど深く濃厚なキスが繰り返されて身体の芯から熱くなって頭がぼうっとしてくる。長いキスから解放されて唇が離れて口の端をつっと唾液がつたうと、それを見ておまえのほうがやらしいよと笑われるだけで感じてしまった。

「ねぇ……早く、来て」

　拒否も抗議もしておきながら最終的には自分から甘い声でねだっているこの現状。あとから思い出したら恥ずかしくて死にそうになるのは目に見えているけど、我慢できなかった。

「可愛いよ、綾。ほんと、おまえに決めてよかった」
「な、なに急に……」
「身体の相性も大事だろ」
「……あっ、あぁっ」

　あぁ、もうこの人なしじゃ生きていけないんじゃないかって思うほどの快感。
　この時の身体のつながりが、さっき心に決めた永瀬との結婚を最後に駄目押しでもう一押ししたことは、絶対に言えない。