Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~

22 実感

「悪かったね。わざわざ来てもらって」

 この日の社長も相変わらずにこやかで、社長室に来るまでガチガチに緊張していたけど社長の顔を見るとどこかほっとする。

「息子が色々と迷惑をかけちゃったね」

 予想通り。いきなりの本題突入に一気にまた緊張が高まる。

「す、すみません! 私のほうこそ……!」

 慌てて頭を下げる。すると慌てて社長がそれを制止する。

「な、なんで君が謝るの!? やめなさい」

 顔を上げて目を合わせると社長はほっとしたように息をついて微笑んだ。

「謝るのは私のほうだよ」
「え……?」
「いや……。年頃なのに一つも浮いた話のない頼りのない息子には、川島さんみたいな堂々とした気持ちの強い女性がぴったりだと思って」
「……はぁ」
「彼に川島さんの話をして、実際に会ってもらって。そしたらものすごく君のことを気に行った様子で……少し、期待していたのはあったんだけどね」
「……え? ……え?」

 思いもよらなかった社長の話に軽いパニックに陥る。
 社長は今話しにあったもくろみを実行するために私と秀則さんを引き合わせて、その上、秀則さんに私……気に入られてたって……? た、たしかにあのメールの量は尋常じゃなかったけど……。でもそうだとしたらものすごく失礼で傷つけるようなことをしてしまった。

「ご、ごめんなさい……!」

 謝る相手が違うのは分かっているけど、謝らずにはいられなかった。すると社長は「息子のことは気にしなくていい」と言って軽く肩に手を置いた。

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