Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
 『雪、降りだしたな』。
 さっき永瀬の言葉が頭の中で響いたと同時に、ガシャンと音を立てて携帯を床の上に落としてしまった。そして一目散に玄関に向かった私は勢いよく扉を開けた。

「やっぱり……!」

 たった今電話で会話をしていた相手が、突然扉を開けて現れた私に驚いた表情を見せて目の前にいる。
 なんで? どうして? たくさんの疑問が浮かんだけど驚きにすぐに声にならなくて、呆然としていると何か大きなものを身体に押し付けられてそれを抱え込むようにして受け取る。

「急に出てきたらびっくりするだろ? あー、驚いた~」
「驚いたのはこっち……」

 永瀬は呆然とする私を無視して部屋の中へと入っていく。私もそんな彼を追って部屋に戻る。

「どうしたの? なんでいるの? 帰ったんじゃないの?」
「うん、実は……」
「ていうか、これは何!?」

 私は突然押し付けるように手渡された両手いっぱいの花束を差し出した。疲れも一気に吹き飛ぶような、気分が明るく元気になるオレンジを基調としたビタミン色の花々で彩られた花束だった。
 突然現れて、謎の花束まで渡されて。混乱する私を見て永瀬は目を伏せてどこか照れくさそうに笑った。そしてすとんと腰を落として私を見上げた。その表情は私の良く知るいつも通りの永瀬の顔。

「突然来て驚かせようと思ったらさ、おまえ31日まで仕事って言うだろ? 前の家はもう引き払っちゃってるし行くところなくて数日ホテルに泊まったんだけど」
「……すみません」

 なぜか責められる。納得はいかないけど驚きが邪魔して怒る気になれず素直に謝る。

「じゃあ、まだ帰ってなかったの……?」
「うん」
「で、でもどうして……?」
「よく考えたらおまえも連れて帰んなきゃなぁと思って。そういう約束だし。正月うちこない?」
「え、えぇ!? また突然……!」
「でもその前におまえの親にも挨拶に行かなきゃなんないし」
「え……え?」

 次々に浴びせられる突然の永瀬の言葉に脚の力が抜けてその場に座り込むと視線の交わる位置が同じくらいの高さになる。

「あともう一個。一番大事なこと」
「え……?」
「まだちゃんと言ってなかった」
「何を……?」

< 90 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop