恋する時間を私に下さい
VOL.13 夢の時間
レースのカーテン越しに朝日を浴びた。
夏の日差しは眩しくて、朝から蝉の声も響いてる。

久しぶりによく寝た気がして、ベッドから下りた。
体の軽さを不思議なくらい感じて顔を洗う。

キッチンへ戻ると、炊飯器のスイッチが入った。
朝食の用意をする前に、寝室へ向かう。

ベッドの上に見える小山に近づく。
膝を下ろして、うつ伏せてる顔を眺めた。


「…よく寝てる……」

柔らかくカールした前髪をかき上げた。
その額にキスをして、頬をすり寄せる。

眠ってる人の顔が歪む。
その顔に微笑んで、朝食を作り始めた。


「朝はご飯がいいな」

いつだったか、そんなことを言ってたのを思い出した。
かつお節と昆布できちんと出汁をとった味噌汁が食べたいと言ってた。

なかなかチャンスに恵まれなくて、叶えられなかったな…と思った。



（良かった……今日は作れて……）

出汁の香りに包まれて、夢みたいだな…と感じてた。
夢なら覚めないで欲しい…と思いながらキッチンに立ってる。

卵は何にしよう…？と思ってた時、懐かしい声が聞こえた。



『リリィさん…』


驚いて振り向いた。
サンタクロースのような風貌の頼三さんが立ってる。
その姿が、光に包まれていた…。


『館長さん！』

お玉を放り出して側へ寄った。
頼三さんは懐かしそうな顔で、私のことを眺めてた。


『元気かね？本は読んでるかね？』

質問には、すぐに答えられなかった。
彼を支えるのが必死で、自分のことは後回しになってたから…。


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