恋する時間を私に下さい
「礼生さん…!」

驚いたような顔して、彼が立ってました。
足元には、見たこともないくらい沢山の花々が咲き誇ってて、嗅いだこともないくらい強い匂いに包まれてる。

私はこの草原を歩いてた。
そこへ礼生さんが現れた。


「……お前……ここで何してるんだ……?」


驚いたままで、聞かれました。


「…頼三さんを待ってるんです…」


呆れるくらいあっけらかんと答えられた。
長い髪を揺らして、白いドレスのようなものを身に纏った彼女は、花冠を頭に乗せてた。


「…ほら。礼生さんにも……」

色とりどりの花で作った首飾りを通された。
むせ返るような花の香りは、いつも彼女の髪からしてたものと同じだった。


「キレイでしょ…」


冠を外して眺める。

夢のようなこの場所は、一体どこだろう…と、辺りを見回した……。





『……迎えに来たのか?』

ジイさんの声がして前を向いた。
彼女の後ろにいるジイさんは、死ぬ前よりも一層元気そうだった。


「館長さん…!」


走り出そうとする彼女の手をとった。

「リリィ!」

驚いたように振り返った。
戸惑うような表情を浮かべ、彼女が俺に言った…。


「もう…何もできませんよ…」

悲しそうでもなく、辛そうでもなかった。
淡々と何かを受け止めてるような顔で、俺のことを見てた。

「…私はもう…精一杯のことをしましたから……」


その言葉を聞きながら、確かにそうだ…と思った。

「……そうだよ…。お前は…ホントに…よくやってくれたよ……」

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