今宵月の下で逢いましょう
月明かりで出逢って
海についたら先客がいた。


見れば少年のようで足首まで波に洗われながら波打ち際に立っている。
首だけを動かして上を向いたり下を向いたり、ときおり遠くを見つめたりしている。

第一印象は怪しさ満点の少年。

声をかけるなんて普段はしないけど、今日はなぜか気になって声をかけてみた。


「ねえ少年。何をしてるのだい?」

波に吸い込まれそうになる前に声はどうやら届いたみたいで、上を向いていた少年がこちらを向いて口を開いた。

「やあ少年。僕は月の落とし物を探してるのさ。」


第二印象なんて言葉があるなら、怪しさ満点じゃなくて怪しい少年に変更しよう。

だって真夜中に波打ち際で独りで突っ立ってるし、何より

「落とし物を探すだなんて怪しす…」

あ、思わず口からこぼれてしまった。

「真夜中にランチバスケット持ってる少年も怪しいと思うけどね。」

浜辺に降りただけの僕にニヤニヤ笑いながら近づいてきた。

半袖のリネンシャツに半ズボンなんてありきたりの服装の少年は何だかチェシャネコに見えてきた。だってあまりにニヤニヤ笑いが様になるから。

それなら僕はアリスなのかしら?
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