赦せないあいつと大人の恋をして
ゆったりした時間
 それから少しドライブを楽しんで夕方にはマンションに送って貰った。隼人さんは明日から仕事。土日は当然店舗は営業。定休日は平日。
 でも従業員の方も月に一度は日曜休みを貰える。家族とお休みが合わなくて子供の学校行事とか日帰りの旅行など、家族サービスくらい出来るようにとの配慮だそうだ。当然、従業員の一人である隼人さんも。早速、次の日曜日には、お休みを貰って少し遠出しようと誘われた。

 朝、マンションまで迎えに来てくれて車に乗り込む。その日は、あいにくの雨になってしまった。予定していた行き先よりも少し近場に変更する事になった。何もこんな天気の日に無理をしなくても、また次の機会という事になった。そういう慎重なところにも好感が持てた。

 翌週は隼人さんの定休日に私が退社後、食事に出掛けた。凝った造りの今流行の多国籍料理の店。お店の中に入ると、ここはどこ? と思いたくなる不思議な空間が広がる。エスニックなような、ヨーロッパも混じった雰囲気もある。お料理もタイ料理? イタリアン? ベトナム風もありの何でもあり。だから多国籍なんだろうけど……。トムヤムクンにパスタに生春巻き。微妙に和風にアレンジもしてあって美味しい。

「気に入って貰えました?」と隼人さん。

「都内に居るとは思えないですね。お料理も美味しいし素敵なお店です」

「良かった。もっと何か頼みますか?」

「いいえ。もう、お腹いっぱいです」

 この店の中には、ゆったりした時間が流れているような気がした。食事を済ませてマンションまで送って貰って帰ると珍しい父から電話。

「綾? 元気か?」

「お正月に会ったばかりでしょう?」

「そうだったな」
 と電話の向こうで笑っている。
「隼人君とは、その後、どうなんだ?」

「さっきまで一緒に食事してたけど……」

「そうか。上手くいってるようだな」

「どうなのかな?」

「何だ? その他人事みたいな言い方は」

「お兄ちゃんの友達と食事してるみたいな感覚が抜けないのよね」

「まぁ、それは確かにそうだが……」

「良い人よ、隼人さん。一緒に居て楽しいし誠実で素敵な人だと思う」

「そうだろう。何も今すぐに結婚しろと言うつもりもないから。ゆっくり生涯の伴侶になるのか見極めるんだな。じゃあ切るぞ」

 良い人だと思う。でも何故だか私でなくても他に相応しい人がいる。そんな気がしていた。
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