赦せないあいつと大人の恋をして
夜のドライブ
 ミカさんには偉そうにアドバイス出来たりするのに……。自分の事になると、どうしていいのか分からなくなる。もっと好きになったなんて言われて、どんな顔したら良いの?

「どうかした?」

 隼人さんって結構イジワルなんだから……。

「ううん……」
 どうもしない……。絶対してない……。

「そういうところが本当に可愛いんだ。知ってた?」

「…………」
 知らない……。

「これ以上言うと返事して貰えなくなるから止めよう」

 隼人さん、きっとすごく優しい顔して私を見てる。恥ずかしくて目も合わせられないのに……。

「お腹空いた?」

「あっ、いえ」

「今夜は美味しい中華を予約してあるから」

 中華? えっ? 横浜まで行くの? それで遅くなるって言ったのね。夜のドライブも素敵だけど……。今まで、こんなに緊張してたのかな? 緊張し過ぎて思い出せない。

 隼人さんとお見合いしてから一ヶ月が経った。二人で会うのは、お見合いの日も含めて、きょうで五回目。週に一度は会っている計算になる。まるで恋人同士みたい。隼人さんを好きなのかな? 嫌いじゃないのは確かなんだけど……。
 一緒に居て楽しい。安心出来る。でもそれって恋愛なの? お兄ちゃんと一緒に居るのと変わらないような気もする。そんなもんなのかな?

「そろそろ着くよ」
 ハンドルを切りながら隼人さんが言った。

「あぁ、はい」
 なんだか返事までぎこちなくなってる気がする。

 車を駐車場に入れて少し離れたお店まで歩いた。

「ここだよ」

 案内されたのは超一流店。店名を言えば誰もが知っている。

「こんな高級店じゃなくても良かったのに」

「同じ食べるのなら美味しいものを食べたいと思ったから。毎日来られるような店じゃないからこそ。でも綾さんと一緒ならカップ麺も美味しいだろうけどね」

「私、カップ麺も好きですけど」

「うん。実は僕も……」

 二人で顔を見合わせて笑っていた。
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