メシトモ!
「でも、近藤さんの気持ちを知ったからには、私の気持ちも近藤さんに伝えるべきだと思ったので」

「そうか。杉山の気持ちがはっきり知ることができてよかった。ありがとう」

「はい」

 単純なことを忘れていた。自分の気持ちを伝えるということは、相手の気持ちを知ることができるんだ。

 私は佐々木さんのことをなにも知らない。だから、全てを勝手に終わらせようとした。知らないで終わらせるより、全てを知って終わらせたい。

 それならやることはひとつ。涼太の言った通り“ストレートに体当たりしていく”という、私らしさを貫けばいいんだ。

「近藤さん、刺身の盛り合わせと明石焼き、頼んでもいいですか?」

「少し元気になったみたいだな。好きなだけ頼め」

「はい」

 私と近藤さんは、たくさんのおつまみを食べ、ちょっと食べ過ぎたなと思ったころ「明日も朝早くから仕事だから、そろそろ帰るか」と近藤さんが言った。

「そうですね。帰りましょう」

 居酒屋を出て駅前に着くと、近藤さんが手を差し出してきた。

「握手、しよう」

「はい」

 私は近藤さんの大きな掌に自分の掌を合わせてギュッと握った。

「うん、また明日な、杉山」

「はい、ごちそうさまでした」

 近藤さんはゆっくりと手を離すと、くるっと背を向けて改札口へと吸い込まれて行った。
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