ラヴィアン王国物語
第三章 第一宮殿の王子
★1☆

 砂漠の人々は、菜食主義で、動物の肉を決して食べない。
 ラティーク王子の例で言うと、焼きたての平たいパンに、ナツメヤシの実、果物に薔薇水を使った珈琲。王子という人種は、一人で食事をしないらしい。

「ラティークさま、次はどちらをお召し上がりになりますぅ?」

 王子に食事をさせる役目は、選ばれた奴隷の花形だ。一人一人が皿を持ち、担当の食材の「ご用命」を受けると、色っぽく食べさせねばならない。

 ラティークのハレムのオンナは、皆魔法でメロメロだから、喜んでラティークのお世話を焼く。それに引き替え、アイラはというと、ちょうど、酔っ払いの中のシラフのような状況だ。うんざりもしてくる。
 第一宮殿・ルシュディ王子に至ってもスタイルは変わらず、上を行っている。

(正気か、これは……何なの? どこからこんなに沸いてくるのよ)

 ルシュディ王子の後には、女官がずらり。八人の女性を側に寄せただけでなく、周りも女性がたむろして、道をふさいでいる有様。すべてが第一王子のハレムの女性であるというから、驚きだ。規模がでかい国は、裏側までも規模が違うのか。


(本当に、ラヴィアンの王子たちって……恋人二人抱えるお兄がまともに見えて来る)


 ウード、シムシミーヤ、ギチャック、ラバーブ、サズ、ゲンブリ、ドンベク、カーヌーン、サントゥール。楽器が奏でられる中、アイラは自分の衣裳を見下ろした。

(奴隷から、こそどろ、今度は踊り子……あたしって本当に王女か)

 豊満な胸を見て、落ち込みそうになって、アイラはアタマを振った。

 ——あたしのチッパイは誰にも負けない。

 それに、第一宮殿に入り込むには、ハレムに参加するが手っ取り早いとラティークが協力してくれた。

 無駄にはしない。 



 親友、レシュロンを探すためにアイラ第一宮殿潜入中——。
 


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