遠すぎる君
寄り添う心

負けちゃった……

観客が帰ってしまった後も、私はその場から立ち上がれずにいた。 

なんて凄い試合だったんだろう。
最後の方の鬼気迫る気迫に圧倒されて、目を反らすことが出来なかった。

1秒ぐらいの差で負けた。

目を閉じると遼の最後のヘディングが過る。

ほんとにほんとに頑張ってたんだ。
毎日毎日遅くまでずっと、練習してたもんね。

最後にフィールドに座りこんだ遼。
ベンチで労われている遼。
今日の遼が次々と閉じた目の前に浮かんできた。

それなのに負けちゃって、悔しいだろうな……
思わず涙が込み上げてくる。
泣きたいのは遼なのに。


「遼……お疲れ様。」

小さな声で呟いた時、ドカッと足元に荷物が置かれた。

「サンキュ」

隣に乱暴に座ったのは、今まさに瞼に浮かんでいた遼だった。
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