遠すぎる君
分岐点
いっぱい泣いた週末が明け

月曜日。
校舎の屋上から垂れ幕が下がっていた。


祝 サッカー部 関東大会出場


地区予選、優勝したんだ。
よかったね、遼。

嬉しい気持ちと切ない気持ちがごちゃごちゃになって
やっぱり目の奥が熱くなる。

泣きながら考えた進路。

青蘭の高等部には進めそうもない。
公立でもできるだけ電車賃のかからないところ。

自宅は母と私で住むことになっている。
残ったローンはもちろん父持ちだけど。

自宅から自転車で通える公立は2校。

ヤクザ養成校といわれるほど荒れたS校と
県内でも1、2位を争う進学校の東高校。

東高校に決めた。

今まで受験とは無縁だったけど
今日からは本腰を入れなくてはいけない。

公立にしか行けないから滑り止めも受けられない。
塾にも通える余裕はない。
そして
普通の受験生より出遅れている。

この日から放課後は図書室に籠り
授業も今までより真剣に取り組んだ。

そんな様子を美幸だけが気付き、
「ガリ勉になった~」
と不思議そうな顔をしていた。

こんな恥ずかしい家庭の事情も知られたくなかったし
受験失敗したら高校生になれないなんて
誰にも言えなかった。

< 15 / 136 >

この作品をシェア

pagetop