遠すぎる君
なんだよ、今日は!

授業の合間合間ごとに呼び出され
チョコと「好きです」のセリフを受け
断ること数回。

もう3人目からは何年のどんなやつかも覚えてない。

放課後までサッカー部の2年マネージャーに呼び出され、
世話になったから邪険にもできず
結構粘ってきたから
「俺、好きなやついるんだ」
と思わず本心を伝えたら、泣かせてしまった。

手間取って教室に帰ってきたら
いくつかチョコを持ってる何人かだけ。
永沢もいた。

しおりは…もう帰ったのか…

しおりの机には鞄はもう無かった。

はぁ~
俺は何をやってる?

好きでもないやつに時間をとられて
しおりとは今日はほとんど顔も合わせられてない。

鞄を持って帰ろうとしたら

「高坂、今日は大漁だったなぁ~」
と囃し立てられた。

「………」
特にコメントはなかったのでそのまま歩き出す。

「中田、青蘭やめるんだって?」

足が止まる。

今日、言ってたよ~と小さなチョコの箱をヒラヒラさせて言う。
「『今までありがとう』だって。律儀だよな…」

振り向いて「それ、あいつから?」

チョコを指すと
「え?うん。おまえももらっただろ?」
ビリッとラッピングを破いて
中の可愛らしいトリュフをパクッと食べた。

「あ、結構いける~全員分作るって大変だったろうなぁ!」
うんうんと頷くクラスメートの横を

「じゃあな」
と永沢が通りすぎる。

「俺も帰るわ」と永沢の後を追った。

昇降口の手前で永沢に追い付き、冷静に声をかける。

「永沢」

ゆっくり振り向いた永沢は
冷たい目をしていた。
「なに?」

永沢から放たれるあまりにも冷えた空気に気持ちが後ずさる。

ごくっと唾を飲み込み
なぜこんな冷たい仕打ちを…?
と思ったが、思い浮かぶのはひとつだけ。

思わず聞きたいこととは違う言葉が俺の喉から出ていた。

「おまえ、しおりのこと…?」
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