遠すぎる君
卒業と別れ
卒業式。

今日は私が青蘭の生徒である最後の日。

三月中旬になろうってのに
ものすごく寒くて
雪がちらつきそうな雲行きだ。

お母さんと私は静かに学校へ向かう。
お父さんは…もちろんいない。

小学校と中学校とこの青蘭で過ごした。
5年生の時に親友と呼べようになる美幸と仲良くなり
中学2年で遼と知り合って。

何事もなく楽しく過ごせると思っていた。

高校卒業までは。

私だけお先に離脱するってのがものすごく淋しいな…

何より美幸や遼と会えなくなるなんて。

そんな思いで校門を潜ると
クラスメートのお母さんたちが寄ってくる。

「しおりちゃん、青蘭辞めるんですって?」

小学校からの顔見知りで仲良さげにお母さんに話しかける。

「あぁ…そうなのよ。」

「また突然でビックリしたわ~」

お母さんはなんとも言えない表情で受け答えしている。

同級生の誰だったかのお母さんを見ているとわかった。

なぜ青蘭をやめるのか、知ってる。

この青蘭はそれなりに金持ちが来る学校。

それを引っ越しでもないのに辞めるということは
まず金銭的に余裕がないから。

それは父親の社会的地位の低下か
あるいは離婚か。

辞める生徒はほぼいない。
だから噂にもなったんだろう。

私が受験したことは周知の事実。

せめて私は堂々としていなければ。
私に悪いとこなんてないはず。

できるだけのことはしたんだ。




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