遠すぎる君
他人の恋
歴史研究部
5人最後の部活。

歴史探求ツアーだ。

夏休み2週目の水曜日。メチャクチャ暑い。

しかしなんだかひんやりした空気が5人を覆っていた。

無口な高野先輩の横を陣取るのは
これまた今日はしおらしい景子先輩。

午前の待ち合わせからずっとこんな調子。

「今日は何かあったんですか?いつも弾丸トークの景子先輩なのに……」

真紀ちゃんがそっと岸田先輩に囁く。

景子先輩はずっと難しい顔をしたり、溜め息ついたり。
高野先輩もそんな景子先輩をチラ見しながら
何か言いたそう。
でも言わないところが高野先輩なんだな。

「う~ん。俺にはわからん……」

岸田先輩も首を傾げている。

「ただ、予定の場所を廻ってるだけですね……ま、それでいいのか。」

私たち三人はただこの二人の先輩に付いていってるだけ。

景子先輩も怒ってるってのとは違うようだし……

二人が脱線することもなくサクサク動くもんだから

結局時間が押すというよりもずいぶん早く廻りきれてしまいそう。

午後3時には最後の神社にやって来てしまった。

縁結びがどーのと真紀ちゃんが言っていた神社だ。

真紀ちゃんが最後だけでも雰囲気を覆そうと
大きな声でわざとはしゃいだ。

「わぁ♪ちゃんとお参りしなきゃ!ね?景子先輩!」 

と肩を叩いた。

私なんて黙って見てるしかなかったのに、
さすがは真紀ちゃん。

しかしそれも景子先輩にスルーされてしまった。

ガックリと肩を落とす真紀ちゃんに
そっと「ドンマイ…」と労い、とりあえず5人でお参り。

そこで高野先輩が
「あ、ちょっとごめん。」とお守りなどが売ってる社に向かう。

真紀ちゃんが「あ、私も行きたいです~」と追いかけていった。

仕方なく景子先輩や岸田先輩と一緒についていく。

社で高野先輩はお守りを選んでいた。

どんなのを選んでるのかと横に立って見ると

うん?
合格祈願…と…恋愛成就…

えぇ!そんなの買いますか!本人の前で!?

景子先輩も高野先輩の手元を見て

「へぇ……高野くん、恋愛してるんだ~
もう成就してるくせに」

と素っ気なく言った。

真紀ちゃんと私はビックリして
顔を見合わせる。

もう、二人は恋人ってこと!?いつのまに!ってな具合で。

それにしては景子先輩の態度、冷た~
ツンデレってやつかしら……

高野先輩がオタオタしているような気がした。
そして岸田先輩は無言。
何かを考えてるようだ。


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