ホオズキ少女の嘘
お医者さんが入ってきて、大丈夫ですか!?と、慌てたように言った。

「え?…はい?」

「記憶がないって本当ですか?」

「そう…みたいですね。」

ここまでの事情を、陸にも手伝ってもらいながら話す。

「つまり…記憶を取り戻すために外出したいと。」

「はい!」

「駄目です。」

「ええ?!」

酷い…即答なんて…。

「今日は色々と調べなければいけないので。明日なら良いですよ。」

あ、駄目な訳じゃないんだ。良かった~…

「せっかく来てもらったのにすいません。」

「いえ。大丈夫です。」

陸も外出許可が明日だけど出たことに安心していると思う。

いつの間に準備したのか、陸はバッグを持ってドアの前に立っていた。

「じゃあ夏来、明日も来るから。」

「分かった。じゃあね‼」

陸が出ていった後、検査が始まった。

「最後に覚えているのは入学式だったね。昨日はどうだった?」

「昨日は…起きたら声がでなくて、色んな人がお見舞いにきてくれて…。陸にもらった花を見ていたら声が出せるようになってて。」

私は覚えていることを離した。

「…でも、昨日は、声が出たのに嬉しくなくて」

きっと昨日の私は記憶があったんだろうな。

声が戻っても、病気は治らないから、死んでしまう。

今の私でも、今その状況になったら一瞬しか喜べない。

その後も検査が続いて、長い時間が経った。

まぁ、長く感じただけで30分位しか話してないんだけど。

「特に異常はないはずなんですが…。1日の終わりに日記を書いてみてはどうですか。」

日記…。

「昨日のことを忘れてしまった時に、日記を見れば思い出すことも出来ます。あ、もちろん見ないので安心してださい。」

「私…日記書いてみます。」

「はい。あ、日記帳のようなノートとペンを持ってきますね。」

そう言ってお医者さんは病室から出ていった。
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