狐と嫁と溺愛と
案内された部屋はすごくいい部屋なんだと思う。



窓の外には海が見えて、部屋の中も広いしキレイ。



「ベッドじゃないって、初めてだ」

「そうなのか?」

「修学旅行もベッドだった」

「布団もなかなかいいもんだぞ」

「温泉は大きいのかな⁉︎」

「ナナは入っちゃダメ」

「どうして⁉︎」

「言っただろ。風呂がいちばん無防備だって。匂いで寄って来てもいいのか?」

「ヤダっ‼︎けど…」



入りたかった…。



せっかく温泉に来たのに…。



「お前が他のヤツに喰われるなんて死んでもごめんだ。自分の所有物を他のヤツに取られることほど腹立たしいことはない」

「あたしは所有物じゃないもん…」

「所有物だよ、俺の。だから俺も、お前の所有物」



胸が苦しくなる。



嬉しい言葉ばっかり…。



そうやって、あたしをコントロールしてるの?



騙してるの?



「それでもいい…」

「なにが?」

「なんでもないよ。温泉は我慢する」

「ん、賢明な判断だ」



あたしは大河さんのものでいい。



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