狐と嫁と溺愛と
でも、正直な気持ちだし…。



「夜ご飯はあたしが作るんですか?」

「いえ、シェフが…」

「そうですか。なら、一緒に食べませんか?」

「私と…ですか…?」

「ひとりで食べてもおいしくないし…。高島さんが嫌じゃなければ…」

「よろしいんですか?」

「はい‼︎」



やっと笑ってくれた高島さんは、本当に美人だ。



できる女って感じで、あたしの世話係なんて本当に申し訳ない。



「シェフがいるなんてすごいなぁ…」

「使用人はシェフがふたりと、私と村上、そして掃除や洗濯をしてくれる住み込みの女性が3人です」

「そんなに…」

「旦那様はお忙しい方なので、なかなか家の事には手が回らないのですよ」



やっぱりセレブだ。



住む世界が違う…。



どうして選んだのが貧乏学生のあたしなの?



誰かに自慢できるようなものは何一つ持ってないのに。



本当に誰でもよかったんだろうな。



あたしじゃなく、他の誰でも。



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