狐と嫁と溺愛と
ふたりで縁側に座り、雫ちゃんに飲み物をお願いした。



「お名前、伺ってなくて。なんとお呼びすればいいでしょう」

「あっ、サエと…言います…。ナナ様…ですよね?」

「ナナでいいですよ。様なんてつけられるような大層な人間じゃないんで」

「では…ナナさんと」

「はい、サエさん」



この人、穏やかな人だな。



あのアズマからは想像もできないようなおしとやかさがある。



「アズマがナナさんを攫って、傷つけたことは間違っていると、私は思ってます」

「うん…」

「ですが、アズマが仲間を思い、あのような行動を起こしたこと、それは理解できるんです」

「そうですね。きっと、狐の誰かが同じ目にあったら、あたしもそう思う」

「もう、そんな争いは見たくありません…」

「あたしもです。意味わかんないこと、いっぱいの世界で、もう心が折れそう」

「ナナさんは強いから大丈夫ですよ」



どの辺が強いのかわからない。



あたし、いちばん非力だよ。


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