狐と嫁と溺愛と
何度しても慣れないし、愛のないキスに毎回ドキドキしてしまう自分がイヤだ。



キスすれば、大河さんは元気になり、あたしは体が少し楽になる。



食事のようなものなんだと思っていても、やっぱりドキドキして辛いよ…。



「甘いの、おいしい…」

「ご気分がよろしかったら作りますか?気分転換にもなるかと…」

「あたしが…大河さんに…ですか?」

「はい、きっとお喜びになると思います」



そんなはずない。



大河さんはあたしを好きなわけでもないんだから。



人生で誰にもあげたことのないバレンタイン。



本命をあげることは、一生ないのかもしれない。



「遠慮しときます。虚しくなりそうだし」

「そんなことは…」

「でも作ろうかな?お世話になってるみんなに」

「ナナ様…」



あたしがキッチンへ入ることを高島さんがシェフに伝えると、シェフは快くキッチンを貸してくれた。



さぁ、久しぶりの料理だ。



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