まだ本当の恋を知らない
海斗は大学卒業後、研究室に残り助手として働いている。

数学の難しい話を楽しそうに話してくれる。

ま、私には何にも分からないことで「うんうん」聞いているふりだけで満足しているらしい。

そして、私の愚痴を同じように「うんうん」と聞いてくれ私を満足させてくれている。
 
今日も横で、新しい研究の話を楽しそうに話している。

だけど、やっぱり話なんて耳に入らない。

いつも以上に…

「…ほ、…うほ、ゆうほ!
ぼーっとすんなよ。食ったら帰ろうぜ。」

海斗に腕を取られ、席を立つ。

「今日は友穂んち行くわ。」

いつもと同じフレーズ、少しの戸惑いを感じつつ無言で歩き始める。

海斗と抱きあえば今日の事なんて薄れるかも、なんて事を考えながら。
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