冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
成二が私の肩に手を掛けてる姿を見た瞬間、進藤は見た事のないような険しい顔つきになった。
進藤が成二をキッと睨んでいる。
成二は私の肩から手をそっと離し、進藤を見ずに何も言わぬまま店に戻って行った。


「進藤?どしたの?」


「夏希さん…」

今度は子どもみたいに情けない顔になり、ホッとした表情を見せていた。



「どうしたの?
あんなに呑まされていたら具合悪くなったんでしょ?」



「夏希さん…どこにも行かないで。」

情けない声を出す進藤。


「なにバカな事を言ってるの?
風にあたりたかったから外で一休みしてただけじゃん。」


「どこにも行っちゃイヤだ。」

そう言って、進藤は一歩近づいて来て私の肩におでこをちょこんと乗せた。
160cmの私より20cmも背が高い進藤が、少し前屈みになりながら、まるで子どものように肩に顔をうずめてくる。


「進藤…しっかりしなよ。
もう…あんまり呑めないくせに、薦められるままに呑むからだよ。」


すると進藤は急にスイッチが入ったようにガバっと肩にうずめていた顔をあげ私をじっと見つめて来た。



「夏希さんが止めてくれたら呑まない。
夏希さんがずっとそばにいてくれたら何でも言う事を聞くよ。」

と言って、私の頬を両手で包み込み、いきなり私の唇を奪って来た。


「ん…!」


私は力の限り抵抗するものの、進藤の力の方が断然強い。
抵抗すればするほど、進藤の唇も強く私に押し付けられた。


「!!!!」

私は進藤から逃げようともがいているのに、進藤の力が強くて動けない。
もがけばもがく程、進藤の唇が更に強く私の唇を貪っていく。
ふっと力が抜け、このまま身を委ねてしまいそうになる。



(ダメ!)

心に警笛が鳴る。
急に我に返り、進藤のスネを思い切り蹴った。



「うっ!!!!」

パンプスの先が進藤のスネにヒットしたからだろう。
進藤は唇を離して、うずくまって唸っている。


「バカ!!!酔っぱらい!進藤のくせに!!!!」

うずくまる進藤を置き去りに、私は逃げるように店の中へ戻って行った。



心臓が飛び出してしまうくらいドキドキしている。
進藤のキス……ホントは嫌じゃなかった。
ただ咄嗟の事でどうして良いかわからなかった。
席に戻ると今日子が心配そうに私を見ていた。



「なにしてたの?遅かったね。
追うように成二が出て行ったし、気が付いたら進藤もいないし。
なんかあった?」


「成二とちょっと話してた。」

嘘じゃない。
けれど進藤との出来事は話さなかった。


「ふーん…なんか顔が赤いけど?」

と今日子は何か言いたそうだったけど、落ち込んだ顔をして戻って来た進藤を見て


「ははーん、進藤は玉砕したか?」

と一人で勝手に想像してた。






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