冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
進藤のマンションは都内の7階建ての建物だった。
1階はデザイン会社が入っていて、2階から上が賃貸マンションになっている。
進藤はエレベーターに乗り5階のボタンを押した。


まだ真夜中という時間でもないけれど、エレベーターの上昇音がやけに大きく聞こえる。


エレベーターを降り、進藤は私の手を少し強引に引っ張って、部屋へ招き入れた。
玄関がまだ閉まらないうちに、壁に身体を押し付けられ強引に唇を奪われる。


「ん…」


最初から唇を押し付けてくるような激しいキス。
タクシーに乗ってからずっと待ち望んでいたかのように激しく求めて来る。


進藤の呼吸が少し荒い。
それに合わせて私も応えてしまう。
進藤の舌が唇を割って中に入って来る。
絡み合う二つの鼓動。
息も付けない程だった。


「進藤…苦しい。」


進藤の唇が触れたまま、私が言葉を漏らしても進藤は止まらない。


「ダメ…夏希さんが僕をこんなふうにしたんだ。」


そう言って、また激しく唇を貪る。
どうしてだろう?
キスだけで蕩けてしまいそうな自分がいる。
こんなの…初めてだ。
今までの進藤のイメージがガタガタと崩れ始める。


「もう…ダメ…」

力が抜けて、しゃがみ込んでしまいそうになると進藤がサッと腰を抱いてくれた。


「夏希さん・・・」

私の腰を抱いたまま、部屋の中へ導き入れた進藤は、薄暗いままのリビングのソファに私を座らせた。
灯りのスイッチを入れると、間接照明のやわらかい光が部屋を照らした。


「すてき…」

今までのキスの余韻を残したまま、進藤が少し余裕を見せる。


「僕のこだわりです。」

と、ぽつりと呟いた。
部屋のことを言ってるんだろう。
私が部屋を隅々まで見渡して、ふと視線を止めた部屋にはセミダブルのベッドが見えた。




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