冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!

進藤の家から出勤した月曜日、進藤のことを意識してしまうかと思っていたけれど、週始めの業務がバタバタしていてあっと言う間に午前中は過ぎた。


今日子といつもようにランチに出掛け戻って来たら、大木さんと目が合った。
たばこを吸う仕草をして、親指を立てて合図された。


喫煙室が非常階段まで追いやられた今日この頃、みんな面倒くさがって喫煙する人が少なくなった。
だから喫煙できる非常階段には人が来ない。


私は大木さんの後に付いて行った。
すると非常階段には望美さんがいた。
大木さんの婚約者で私の大好きな先輩。


半年前まで同じ設計部にいたけれど、大木さんとの結婚が決まって事業部内移動している。
異動先は企画部。


「望美さ〜ん、どうしたんですか?」

と、思いがけない来客に喜びを隠せない私とは逆に少しひきつった笑顔で返して来た望美さんを見て、何かあったんだと瞬時に悟る。



「なっちゃん、平岡くんとよりを戻したの?」

唐突な質問に目を丸くする。
望美さんは成二とのことを知っていた数少ない一人だ。



「えっ?ない、ない!いきなりどうしたんですか?」

望美さんは苦笑いしながら、そっと私に手を延ばして来た。



「じゃ、これはなに?」

私が巻いていたストールを指でめくって首元を確認する。
私は反射的に首元を手で抑えて真っ赤になった。



「これは・・・」

大木さんはそばでタバコを吸ってるけど、ニヤっとしながら、私への望美さんの尋問を見ている。



「正直に答えて!」

こんなに立ち入った事を普段は聞かない望美さんが今日はおかしい。目が真剣だ。




「これは・・・成二じゃありません。」

私は赤面しながら答える。



「ホントね?」



「ホントです。」

と、力強く言い切ると、望美さんの顔からふっと力が抜けていくのがわかった。



「な、正野はそんなヤツじゃないって言っただろ。」

大木さんが望美さんに少しキツい口調で言う。



「いったい、どうしたんですか?」

私は訳もわからず答えを急かす。
望美さんの顔が再び曇っていく。



「なっちゃん、いやな噂が立ってるの。
土曜日のソフトボール大会の帰り、なっちゃん平岡くんと帰った?」



「あっ・・・!」



「平岡くんの車に乗ったでしょ?」



「あっ、はい・・・でも・・・それ違うんです。」

どうやらコンビニで成二の車に乗った私を誰かが見ていたらしい。



「成二が話があるというから、車の中で話すっていうから。
でもちょっとモメちゃって、その後、すぐに進藤が迎えに来てくれたんです。」



「じゃ、その首にある跡は進藤か?」

大木さんが面白がって口を挟む。
私は言葉では答えない代わりに俯いてしまった。



「まったく、がっつきやがって、タイミングが悪いヤツだ。」



「イヤな噂って言うのはね、なっちゃんと平岡くんがあの日、ホテルに行ったって。」



「えええええっっ?!」



「車に乗って帰ったのを見られて、そのキスマークでしょ?
最初はみんな面白がってるんだと思ってたんだけど、どうやら噂を立てているのは・・・」


と言うところで、二つ下の階の非常階段の扉が勢いよく開いた。
私達3人は一瞬にして話を止め、息を潜めた。
そこにいたのは、紛れもなく今話題にしていた中の二人だった。







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