登山ガール
一章 滝子山
「ねぇ花菜、最近少し頑張りすぎじゃない?もう少し肩の力を抜いた方がいいよ。下の子に抜かれる辛さは分かるけど、それで体を壊したら元も子もないでしょ。」

「はい。けど私、先輩みたいになりたくないので。」

「あんた、あたしの事をバカにしてるでしょ。仕事は出来ないけど、彼氏は出来てるんだからね。あたしは、勝ち組なんだからね。」

まったく、この先輩はどうして彼氏とかの話をするんだろう。そうですよ、私なんて産まれてから一度も彼氏なんていないですよ。彼氏いない歴=年齢の負け組OLですよ。
何か悪いか、こんちくしょう。

「でさ、明日あたしと由美で山に行こうと思ってんだけど、花菜も来ない?」

「へ?山ですか。私、山なんて登ったことないんですけど。」

「大丈夫大丈夫。あたしも無いから。だけど、由美は何度か登ったことのある山なんだって。きっと楽しいよ。森林浴だっけ、仕事の事なんて忘れちゃうぐらいだよきっと。」

「はぁ。先輩、素人が増えた方が自分の運痴がバレないとか考えてません。」

「あはは、バレたか。しかし女の子が“うんち”なんて言っちゃ駄目だよ“うんち”なんて。だからモテないんだよ花菜は。」

この先輩に彼氏が出来て私に出来ないのなら、この世界が間違ってるよ。だって、“うんち”って二回言ったよ。私、一回だよ。

「ってなわけで、明日現地集合ね。」

「先輩。私、行くとは一言も言ってないです。」

「明日、彼氏とデートするってんなら許す。じゃなかったら来ること。後で場所とか時間とかをlineするから。じゃ~ね~。」

先輩は自分の部署へと戻っていった。

明日までに彼氏なんて出来るはず無いじゃん。
そもそも、あと3時間ぐらいで日付も変わっちゃうし。

急いで、仕事を片付けなきゃ。








ピロン。

自宅に帰り、コンビニのお弁当を食べながらテレビを見ていると、スマホがlineの表示をしていた。

はぁ、先輩かな。場所や時間を送ってきたんだろうな。
はぁ、行きたくない。家でゴロゴロしてたい。

嫌々ながらも、スマホに手を伸ばす。

“line”

先輩
明日、7時30分までにJRの笹子駅に集合ね。近くにコンビニとか無いから注意して来るように。


了解です。家の近くのコンビニででも買って向かいますよ。

由美
花菜ちゃんは大丈夫だとして、桜井先輩は遅刻しないように。
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