きっかけは誕生日
「母方の従妹です。たまに来るんですよね。ただ飯食いに」

 金井さんが呟いて、私をカウンター席に座らせた。

 それは、いつも座る席。

 金井さんがカウンターに戻り、それから咲良ちゃんが代わりに私の隣に座る。

「先輩って、ここの常連なんですってね。いつもお昼はバラバラだから知りませんでした」

「はあ……まあ……」

 常連と言っても、週の半分くらいをお昼に過ごすだけで……

 この辺りは、あまりお店もないし、実はとても重宝している。

「でも残念~。私はそろそろ戻らないと」

 咲良ちゃんは本当に残念そうに呟いて、バックからガサゴソと何かを取り出した。

「こんなもので申し訳ないですけれど、お誕生おめでとうございます」

 何やらピンクの包装紙を渡されて、思わず受け取った。

「ありがとう……」

 祝うような歳じゃないんだけど……

「では、また後程!」

 元気よく言ってから、咲良ちゃんはカフェを出ていった。

「…………」

「…………」

 来てしまったものはしょうがない。

 バックから雑誌を取り出し、カウンターの中の金井さんに声をかける。

「サンドイッチセットを下さい」

「いつものですね」

 金井さんはニヤニヤしながら、頷いた。

 誰もいない店内に、ゆっくりとしたBGM。

 それにコーヒーの薫りが混じって心地良い。

 雑誌をパラリとめくりながら、モデルさんの服装に首を傾げる。

 今までの服装と代わり映えはしないけれど、雑誌のモデルさんは女らしく見える。

 何の違いだろう? やっぱり素材的なもの?

 それとも、モデルさんがキラキラと綺麗だから?

 それなら、平凡な私は真似てもやっぱり野暮ったいのかなぁ。

 悩んでいたら、コーヒーが傍らに置かれた。
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