俺様主人の拾われペット




「…思えばあの時会ったのも…変なもんだな…。」







仁美さんはそう言って
懐かしむように目を細める。




家出をして
夜な夜な歩き回って辿り着いた公園で

こんな風に出会うなんて

確かに普通じゃあり得ない。





…奇跡だなぁ、なんて
つくづく思う。








「あの時の千夏、すげぇ泣きそうな顔して黙ってたよな。」

「うっ…。」







そう言いながらケラケラ笑って

私の顔を覗き込む彼。




そ、そんな恥ずかしいこと
思い出さないで欲しい…!







「ひ、仁美さんだって
泥だらけで飢え死にみたいな…!」

「っ、るせぇ!
あの時は本当に家帰れないと思ったんだっつの!」






対抗して私がそう言えば

仁美さんは少し恥ずかしそうにしながら
ムキになってそう答える。




お互いに最初のことを思い出して
懐かしがっているうちに

仁美さんがふと

真剣な顔になって
私の方へ向き直る。








-------ドキッ









その真っ直ぐな視線に

射抜かれたように体が固まって
動けなくなる。




そして

それと同時に、鼓動が激しく鳴った。









「…こんな出会い、運命にしか思えねぇ。」

「…っ…。」

「……だからな、千夏。」









そう言って仁美さんが

着ていたジャケットの胸ポケットから




高価そうな
白い入れ物を取り出して

私は思わず息が止まりそうになった。






…まさか、そんな……









「…俺はこう考えてんだけど、お前どう思う?」








そう言いながら
仁美さんは小さく口角をあげて


その箱を静かに開いて

私の前に差し出した。







…そんな、嘘……









「こ、これって…っ!!」

「------千夏。」








目の前に出されたものを見て
思わず目が潤み始めた時、


仁美さんがそう優しい声で名前を呼んで

私の顔を覗き込む。




そして










「…俺と、結婚してくれないか。」









優しく笑いながら

そう、告げた。









「っ…は、はい…!!」

「フッ、いい子だ。」








こんな時までも俺様で
上から目線な返事だけど


その顔は

すごく嬉しそうで。





私は嬉し泣きをしながら
思わず仁美さんに抱きついて。




そんな私を受け止めながら
箱からその物を取り出して


私の指に、はめる。









「仁美さん、私今…すごく幸せです!」

「ばーか。
…俺のが幸せ者に決まってんだろ。」








そう言いながら笑いあって

抱きしめあって




そしてそのまま

キスをした。







そんな2人の指には







やっぱり彼のチョイスらしい


高価そうな光るダイヤモンドが
細かく散りばめられた

綺麗な------結婚指輪。





















END






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