サヨナラの向こう側
新藤は意外にも、すんなりと受け入れた。


ただ、そのあと告げられたことは、俺を打ちのめすのに十分だった。




「ごめん、私、千広くんに嘘ついてた。


美久と皆川先生は、始業式の前に出会ってたんだよ。


美久が痴漢にあって、それを助けたのが皆川先生だったの。


美久はそれで、好きになったんだよね」




あの時。


部室で美久が話してたのは、そういうことだったのか。



俺が一緒に行っていれば、痴漢になんか会わなかったのに。


あの日は確か、寝坊しちまって。


俺は、大切な人を守ることもできないんだな。


俺がそばにいれば。


美久が、皆川を好きになることはなかったかもしれない。



後悔しても遅いけど。


こんなに近くにいるのに、美久の運命の相手は、俺じゃないのかもしれないって思った。






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