サヨナラの向こう側
「ごゆっくりどうぞ」


「ありがとう」


そんな、ふたりで声そろえて、言わないでよ。


振り返って厨房に戻るとき、我慢してた涙が一筋、あふれた。



慶がすぐにそばに来て、


「休憩はいれ」


と、私を奥へ追いやった。



休憩室で、私は思いっきり泣いた。



先生、ほんとに結婚するんだ。


嘘だったら、夢だったら良かったのに。


先生たちが、この店に入ってこなければ。


もう少し、先生を想っていられたのに。


もう、想うことも無理なんだね。




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