サヨナラの向こう側
それからのことは、よく覚えていない。


恵未に抱きかかえられるようにして、ホテルへ戻ったらしい。


夕食もほとんど手をつけず、ひたすら先生の言葉を繰り返していた。



先生の彼女。


彼女、いたんだ。



恵未はずっと、私に寄り添ってくれた。



「明日のダイビング、キャンセルする?


もしキャンセルするなら、私も一緒にやめるよ」


とまで言ってくれたけど、キャンセル料かかるし、ダイビングはやってみたかったから、


「・・・だいじょうぶ、やろう」


って、答えた。



恵未は、先生のことを諦めた方がいいとか、一切何も言わなかった。


ただ、


「やっぱり、ツラい思いしちゃったね。


でも、好きなんだもん、仕方ないよ。


これからのことは、美久にしか決められないから」


って、背中をなでながら慰めてくれた。



その晩。


生まれて初めて、眠れない夜を過ごした。




< 71 / 270 >

この作品をシェア

pagetop