奇聞録四巡目



「ほらあのビルのひび割れ、おかあさんて見えるだろう?」



友人が僕に言う。



「あそこの電柱の花。この前ここで事故があったんだよ。」



友人が僕に言う。



「オフィスビルの入り口に染みがあるだろう?飛び降り自殺したあとだってさ。」



友人が僕に言う。



「河川敷のこの祠さ、よく水死体が上がるから建てられたんだよ。」



友人が僕に言う。



「あそこの家、一家皆殺しになったんだって。」


友人が僕に言う。



「あそこの木で、よく首吊りあるらしいよ。」



友人が僕に言う。



「あそこの丘、戦争で亡くなった人を埋めている場所なんだって。」



僕は友人に言う。



「で、何が言いたいの?」



友人が僕に言う。



「忘れないであげなきゃと、思うんだよ。」



友人は陽炎に溶けるように消えていった。



僕は下校の時、「また明日ね。」と、言った友人の顔を、はっきりと思い出した。



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