ベナレスからの手紙

バイト三昧

三月、ついに農学部に松田ともども合格した。ところが家の事情
があって二十歳になったことだし自活してくれと連絡があった。
はじめからそのつもりだったので親元にはいろいろとお世話に
なりましたと礼を述べてアルバイト三昧に入った。

大学の寮にも入れて学費も安く奨学金とアルバイトで、頑張れば
この1年で旅費は貯まる。さあ海外放浪の旅に出るぞ!そう決めて
朝昼晩とアルバイトに精を出した。

杏子の方も教育実習や卒論やらで忙しく広島と京都を行ったり来たり、
なかなか電話での連絡も取れず手紙を一度出したきりでその歳もくれた。

年が明けると寮問題がこじれて学園紛争が起きた。東京に発した紛争の
嵐が関西でも発火したのだ。大学はバリケード封鎖され授業は一切中止
された。教授陣のつるし上げ団体交渉が連日続き色とりどりのヘルメット
軍団が押し寄せ大学は閉鎖状態が続いた。

治はこれ幸いにとアルバイトに明け暮れあっという間に1年が過ぎた。
年末に杏子へ手紙を出して翌年夏の終わりにヨーロッパへ旅立った。
その年の暮れに杏子は死んだ。22歳の若さだった。なぜ?
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