好きでいてくれと願う
おい、真由子






「そうそう。昨日のりちゃんと遊んだんだけどね、のりちゃんも青春してるよ。ほら、知ってるでしょ?B組の森崎君なんだってね。どうりで二人で帰ってたわけだ。いや、別にのぞいていたわけじゃないよ。何よ、その目は。別に私だってそんな趣味はありませんよーだ」



 ――――やかましい。
 放課後、休んだ分のノートを頼む相手を間違えたか、と俺は思った。

 確実に間違った。

 スカートは元気な性格に似合わず、長い。そして比較的校則は守っているのは感心する。ここの学校はどこか不良じみていて、かつ馬鹿学校だ。それでも彼女は頭は悪くなく、数学はいつも負けていた。

 くせ毛。めがね。美人ではない。兄弟がいる。猫と犬を飼っている。そしてバス通学。知っているのを思い出しては、そういえば真由子のことってあまり知らないと気づいてしまう。

 誕生日、いつだっけ。そもそも聞いたことがあったか。




「でもね、森崎君と付き合うまで結構大変だったんだって。森崎君、面倒見いいし、後輩からも人気があって、後輩のアピールにあせってたって。部活とかいつも間に合わなくて先を越されてって。そういう話をしてさ、やっぱりのりちゃん、花の女子高生だなぁって思ったのよね。最近ぐっとかわいくなって、隣のクラスの河合君、のりちゃんが好きだって聞いてたし」

「…河合が?」



 顔をあげず、ここでようやく知っている名前が出たので、俺は反応した。
 のりちゃんって誰か、俺は知らない。あだ名だろうか。
 
 それにしても彼女はよくしゃべる。



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