エンディングは”そこ”じゃない……
悲しみは寄せては返す波のように…

告別式



ポクポクポク……

住職の叩く木魚の音。

有難くも意味は分からない住職の上げるお経を聞きながら

焼香の順番を待っている。

『この場所にはもう二度と来たく無かったのになぁー』

6年の月日が経ったけれど、この場所に立っていると

嫌でもあの日のことを思い出してしまうから

もう直ぐ私に焼香の順番が回ってくる。

それなのに背中や掌にじんわりと湧き出す冷や汗。

「もう平気だと思ってたのに……」

誰に聞かせるでもない呟きを残し遠のいて行く意識。

私の体を受け止めたのはセレモニーホールに敷き詰められた絨毯ではなく

見知らぬ男性の腕だった。



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